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初心者のためのLTspice 入門 コイルを利用した電源回路(1)チョーク・インプット型全波整流回路

 日常使うAC-DCアダプタなどは、コイルを利用したスイッチング電源化によって大幅に小型化され、効率もよくなり発熱も少なくなりました。今回から、コイルを利用した電源回路をLTspiceXVIIで確認していきます。コイルはスイッチング・レギュレータにとっては不可欠なデバイスです。最初に、コイルを利用した平滑回路、チョーク・インプット型全波整流回路の動作を確認します。急激な負荷変動の実験を行うために、今回は電流源currentを利用します。
 
チョーク・インプット型全波整流回路

 次に示すように、L1に30mHのコイルを使用したチョーク・インプット回路です。まず変動のない負荷として20Ωの抵抗を設定し、過渡状態のシミュレーションを行います。


 

電源投入後200msのシミュレーション結果

 過渡解析で .tran 400m と、電源投入後400ms間のシミュレーションを行いました。次にシミュレーション結果を示します。
 茶色のV(n001)は、ダイオード・ブリッジ回路で全波整流された出力です。青色のV(n002)は、L1とC1で構成されるチョーク・インプット型の平滑回路の出力です。0Vから38Vまで大きく変動している整流回路の出力が、平滑回路で平滑化されて24Vくらいの大幅に電圧変動の少ない直流になっています。負荷は20Ωの抵抗を用いたので、約1.2Aの電流が流れています。

 この平滑化されたV(n002)の出力電圧は、最初にピークが現れ、その後は負荷が変動していないので100msくらいから以降は安定化に向かい、200msくらいから定常状態になっています。

 L1のコイルに流れる電流、コンデンサに流入・流出する電流、負荷に流れる電流の関係を確認するために、これらの関係が安定化された後半部分のグラフを拡大しました。
 緑色のI(R1)は負荷の抵抗に流れる電流です。ピンク色のI(L1)はコイルに流れる電流です。I(R1)はこのI(L1)の平均化されたものになっています。
 

コンデンサの充放電電流I(C1)

 上記の図で、赤色のI(C1)はコンデンサへの入出力電流です。

  I(L1)>I(R1)  のとき、I(L1)-I(R1) の電流がC1に流れ込む
  I(L1)<I(R1)  のとき、不足分の I(R1)-I(L1) がC1から負荷に供給される 


 I(C1)の電流値は0Aを中心におおよそ±0.9Aの範囲で変化しています。プラスの値のときはコンデンサC1に充電され、マイナスの値のときはコンデンサから負荷に電流が流れます。

コイルに流れる電流I(L1)

 コイルに流れる電流は、初めはコンデンサに充電するための電流が主なものです。このコイルのインダクタンスのために、コンデンサの突入電流は制限されています。定常状態では負荷に流れる電流以上の分はコンデンサの充電電流となり、コイルからの電流で不足する部分はコンデンサからの放電電流で補われています。
 そのために、コイルからの電流は負荷に流れる電流の値を中心に変動し、コンデンサは充放電が行われるため、0を中心にプラス/マイナスの変動を繰り返します。

負荷を変動させるいくつかの方法

 照明のスイッチを入れたり、モータのスイッチを入れるときの過渡状態のシミュレーションを行うために、スイッチをON/OFFして負荷を変動させる方法をいくつか考えます。コンポーネントに電圧制御スイッチがあるので、最後はこの電圧制御スイッチを使用します。電圧制御スイッチを使用する場合は、負荷をインダクタンス、抵抗などと用途に応じて選びます。また、負荷変動によって電流のみ変動する場合は、電流源を付加する方法も考えられます。今回はこの方法で負荷を変動させてみます。

電流源 current

 さきほどの回路に、電流源を次のように追加します。ファンクションでパルスを選択し、I1の電流値を0A、I2の電流値を5A、1秒後に最初のパルスの立ち上がりとなります。5Aの時間は0.5秒、周期が3秒としています。

 

 シミュレーション時間を2秒としたのが、次の回路です。パルスの立ち上がり/立ち下がりはデフォルトの値にしていて、50msくらいの時間です。

 シミュレーション結果は次のようになります。負荷の増加時に出力電圧が変動します。 I(L1)-I(C1) がR1とI1に流れる出力電流になります。I(R1)+I(I1)も同じ値になりますが、平滑回路の動作確認も含めてここではI(L1)-I(C1)を、次のAdd Traces to Plotの画面で設定しました。このAdd Traces to Plotの画面は、グラフの画面をマウスでクリックしてこのペインを選択します。メニュー・バーがグラフ用に変わります。メニュー・バーのPlot Settingを選択し表示されるリストから、Add traceを選択します。グラフ画面をマウスの右ボタンをクリックして表示されるリストにもAdd traceがあります。これを選択しても同じです。

 青色のI(R1)は抵抗R1に流れる電流、ピンク色のI(I1)は、出力の電流源I1に流れる電流、赤色のI(L1)はコイルに流れる電流、緑色のI(C1)はコンデンサの流出入電流です。茶色のI(L1)-I(C1)は、出力電流に相当し赤色のコイルに流れる電流の平均値に相当しています。

 

 立ち上がり/立ち下がりの時間を急峻にするために、次に示すようにTrise 、Tfallの値を0.1msに変更したパルスにします。

 負荷のI1の変化が急峻になるように設定してシミュレーショしました。次に示すように、負荷が変動したときのリンギングがより大きくなっています。

 I(I1)で示される電流源I1に流れる電流は、設定された仕様通りの0A、5Aの一定の値になっています。このように電流源を負荷にするとシンプルな回路で任意に負荷に流れる電流を変化させることができます。次回は、電圧制御スイッチを利用して負荷への通電をON/OFFしてみます。

(2018/5/2 V1.0)

<神崎康宏>

初心者のためのLTspice入門 ◆オームの法則を確認する

(1) 抵抗の設定
(2) .measコマンド E/I=R
(3) .step .praramコマンド IR=E
(4) 電流源currentで過渡解析 I=E/R

◆オームの法則で回路に任意の電圧を作る

(1) 抵抗分割
(2) 抵抗分割で得た電圧に対する前後の回路の影響
(3) 抵抗分割で得た電圧に対する後回路の影響
(4) 電池の内部抵抗をシミュレーション

◆LTspiceXVIIはUNICODEに対応して日本語表示もできる

(1) LTspiceXVIIで日本語を表示
(2) 日本語表示をいろいろ試す
(3) グラフ画面にも日本語表示

◆シミュレーション結果を保存しその結果を利用する

(1) WAVEファイルにする
(2) LTspiceで出力されるwaveファイルの保存先
(3) BVコンポーネントでいろいろな信号を作る
(4) waveファイルを電圧源として読み込む
(5) waveファイルを有効利用

◆AC電源から直流電源を作る

(1) ダイオードによる整流回路
(2) ダイオードによる半波整流回路に平滑回路を追加する
(3) ダイオードによる全波整流回路
(4) 全波整流回路のリプル
(5) レギュレータICを利用して±の安定化電源を作る

◆ダイオードの動作確認

(1) ダイオードのモデル

◆コイルを利用した電源回路

(1) チョーク・インプット型全波整流回路
(2) 電圧制御スイッチで負荷をON/OFFする
(3) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(1)
(4) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(2)
(5) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(3)