初心者のためのLTspice 入門 オームの法則で回路に任意の電圧を作る(2)抵抗分割で得た電圧に対する前後の回路の影響
抵抗で電圧を分割して得た電圧に回路を接続したときに、その電圧がどのように変動するか確認します。
電圧を測定するディジタル・マルチメータにも、電圧を測定するときにわずかですが電流が流れます。ディジタル・マルチメータの仕様書には、入力インピーダンスが10~100MΩの値になることが示されています。この流出する電流の影響をLTspiceで確認します。
V(v1) × R1 /(R2+R1)= 5 × 2k / (3k+2k) = 2 |
2Vの表示です。
ディジタル・マルチメータでOUTの電圧を測定するときは、GNDとOUTにディジタル・マルチメータの端子を接続します。その場合、次に示すように、R1に並列にディジタル・マルチメータの内部インピーダンスの抵抗分の10MΩが接続されたのと等価になります。
R3に流れる電流の増加分に対応してR2の電圧降下が増加し、OUTの電圧がその分低下します。
シミュレーションの結果を次に示します。OUTの電圧は2.000Vから1.9997Vに低下しています。
●R1とR3の合成抵抗値を求める
R1、R3に流れる電流の和で抵抗に加わる電圧を除算したものが、R1、R3の合成された等価抵抗Reとなります。
R1、R3に加わる電圧をEとするとR1に流れる電流 i1は、
i1 = E/R1 |
R3に流れる電流 i3は、
i3 = E/R3 |
Reに流れる電流 (i1+i3) は、
(i1+i3) = E/Re |
となります。電流を電圧と抵抗で表すと次のようになります。
E/R1 + E/R3 = E/Re 1/R1 + 1/R3 = 1/Re Re = R1 × R3 /(R1+R3) = 2k × 10000k /(2k+10000k) = 20000k/10002=1.9996k |
等価抵抗値Re=1.9996kとなります。
R2の3k抵抗とReの1.9996kの抵抗で5Vの電圧を分割すると、
5×Re /(R2+Re)= 1.9997 |
とLTspiceのシミュレーションの結果と等しくなります。
●同じ抵抗を並列に接続すると抵抗値は1/2になる
抵抗を並列に接続した場合の等価抵抗値Reは、次のようになるので、
Re = Ra×Rb /(Ra+Rb) Ra=Rbなので、 = Ra×Ra / 2Ra = Ra/2 |
と元の抵抗値の1/2になります。
同じ値の抵抗値を複数並列に接続した場合、その等価抵抗値は1/(抵抗の本数)になります。テストなどでは、該当する値の抵抗が見つからない場合、パラレル(並列)に接続する場合がしばしばあります。
今回は入力抵抗が10MΩのディジタル・マルチメータを想定し、10000k/2kと5000倍の差があるとき、二つの抵抗を並列接続した場合の例を示しました。1000、100、10倍のように差が少ないときにはどうなるかをシミュレーションしてみてください。次回その確認を行う予定です。
(2018/2/25 V1.0)
<神崎康宏>