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トランジスタの働きをLTspiceで調べる(2)実トランジスタ

実際のトランジスタで動作を確認する

 前回LTspiceの用意したNPNトランジスタでシミュレーションして、ベース電流とコレクタ電流、ベース電圧とベース電流の関係を調べて、次の結果を得ました。
 ベース電流は、ベース電圧が0.8Vくらいまで上昇して初めて流れ始めます。ベース電流が流れだすと、ベース電流の100倍のコレクタ電流が流れました。ベース電流とコレクタ電流の関係は、ベース電圧が0.6V以上では一定になっています。

 LTspiceには、実際に入手できるトランジスタのモデルも用意されています。今回は秋月電子通商で、10個入りのパックを100円で購入した2N4401でシミュレーションの結果と実際のトランジスタの動作で確認します。

実トランジスタの選定方法
 実際のトランジスタを設定する方法を次に示します。まず、これから選択するトランジスタと同じタイプのトランジスタを回路図のペインに設定します。

 回路図のトランジスタをマウスの右ボタンでクリックすると、次に示すようにトランジスタの仕様を設定するダイアログ・ボックスが表示されます。ここで、設定した電圧や電流値は利用者の注意の喚起に役立ちますが、LTspiceのシミュレーションの制限条項にはなりません。
 トランジスタの選択はダイアログ・ボックスの中の「Pick new Transistor」のボタンをクリックすると、選択できるトランジスタの一覧が表示されます。

 選択できるトランジスタのリストを次に示します。先頭が型番、次がメーカ名で、タイプ、Vceo、Icに続いてモデル・データが表示されます。

 今回は2N4401が該当するトランジスタです。このトランジスタを選択すると、次に示すように回路図のトランジスタが2N4401になります。
 デフォルトのトランジスタより、電流が流れだすベース電圧が少し下がっていて720mVくらいになっています。


 デフォルトのトランジスタと同様に、ベース電流、ベース電圧、コレクタ電流とコレクタ電流/ベース電流の値(電流増幅率)をシミュレーションして次に示します。少し異なった様子を示しています。

 グラフが見やすいように、グラフのみの表示にしました。グラフのペインの枠の右上にある四角の最大化のアイコンをクリックします。

 2N4401のコレクタ電流の絶対定格は600mAです。ベース電流が4mAのとき540mAのコレクタ電流になっています。実際の回路ではこの電流を流すと、表示用の5mmΦのLEDでは焼き切れてしまいます。小型のLEDに流せる電流の値では20mAくらいです。
 そのため、LEDを外して抵抗を挿入し電流制限が行えるようにします。

抵抗が電流制限抵抗として働く
 次に示すように、抵抗に変更することで容易に電流を制限できるようになります。





 次は、ベースに電圧を加える回路ですが、実際にはボリュームを利用します。次回ボリュームも追加し実際の回路でもテストします。

(2016/12/9 V1.0)

<神崎康宏>

バックグラウンド

制限条項;トランジスタのVceoが40Vであっても、シミュレーションでは100Vを印加しても動作の検証ができます。

トランジスタの働きをLTspiceで調べる

(1) 第1歩

(2) 実トランジスタ

(3) 2N4401

(4) エミッタ接地

(5) .measコマンド

(6) .measコマンドで測定

(7) .measコマンドでAC解析

(8) .measコマンドでDC解析

(9) 定電流回路