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トランジスタの働きをLTspiceで調べる(9)定電流回路

LEDを定電流で駆動する
 
 今回はトランジスタを利用して、LEDを定電流で駆動する回路を検討します。
 
この回路の定電流となる仕組み
 Q1のコレクタ-エミッタ間に電流が流れていない場合、Q2のベースはエミッタと同じGND電位となります。そのためQ2のコレクタには電流は流れません。R1経由でQ1のベース-エミッタ間に電流が流れます。Q1のベース-エミッタ間に電流が流れると、そのhfe倍のコレクタ-エミッタ間電流が流れます。Q1のコレクタ-エミッタ間電流が流れるとR2にも電流が流れ、Q2のベース電圧がR2の電圧降下分上昇します。Q2ベース電圧が0.6V以上になるとQ2のコレクタ-エミッタ間に電流が流れ、Q1のベース電流が減少します。そのため、R2に設定された抵抗値に応じた定電流がQ1のコレクタ電流として流れます。
 以上の仕組みをシミュレーションで確認します。
 
 
 トランジスタを実際に入手できるものに変更しました。変更はトランジスタのアイコンをマウスの右ボタンでクリックし、表示される仕様の設定画面で「Pick New Transistor」ボタンをクリックして、次に示すトランジスタのリストから2N4401を選択しました。
 
 
  2N4401は、2017年6月現在秋月電子通商で入手できます。
 

 
 
 この回路の電源が5Vで動作したときのようすを確認します。N001の電源電圧、N002のQ1のコレクタ電圧、N003のQ1のエミッタ電圧、N004のQ1のベース電圧を測定しました。電圧のスケールが400mVから5.2Vで400mV刻みのグラフとなっていたので、グラフの縦軸をマウスの右ボタンでクリックして、次に示すように軸の目盛りの設定ダイアログ・ボックスを表示して変更します。
 上端を示すTopを5.0Vにして刻み幅を500mVに、底辺を0Vに設定しました。併わせてLEDに流れる電流も表示しました。
 

 LEDはデフォルトのLEDを設定しています。このLEDの順方向電圧降下が0.7Vくらいです。
 
 
 実際のLEDでは順方向電圧が低い赤色のLEDでも1.7Vくらい、白色のものなどは3V以上になるので、LTspiceに組み込まれているダイオードのリストから日亜のNSPW500BSを次のように選択します。
 

 

 
 LEDに流れる電流は約18mAで、
   Q2のベース電圧(0.6V) / R2の抵抗値(33Ω)= 約0.018A

で設定される値となっています。またこのNSPW500BSの順方向電圧降下は、
   5V - 1.7V 

で3.3Vくらいになっています。
 
 

電源電圧を変えてみる
 次は、この回路で電源電圧を2.7~10Vまで変化させたときの状況を調べてみます。電源電圧を変化させるのはDC Sweepのシミュレーションを選択することで行えます。
 回路図画面が選択されたときに表示されるメニュー・バーの、

   Simulate > Edit Simulation Cmd
  
を選択すると、Edit Simulation Commandのウィンドウが表示されます。このウィンドウのDC Sweepのタグを選択すると、次に示すDC Sweepの設定が行えます。スイープする電源は3か所まで指定できます。
 
Name of 1st source to sweep スイープする電源V1を設定する
Type of sweep  Linear、Octave、Decade、ListからLinearを選択する
Start value

スイープの開始電圧。2.7Vと設定した

Stop value

スイープの停止電圧。10.0Vと設定した

Increment

スイープの刻み幅。0.1Vとした

 
 

 電源電圧V(n001)、Q1のコレクタ電圧(n002)、Q1のエミッタ電圧(n003)、Q1のベース電圧V(n004)、Q1のベース電流Ib(Q1)、LEDに流れる電流I(D1)、Q1の消費電力をグラフ表示しました。Q1の消費電力はALTキーを押しながらマウスのカーソルをQ1の上に持っていくと温度計のマウス・ポインタに変わり、ベース電流とベース-エミッタ間電圧、コレクタ電流とコレクタ-エミッタ間電圧の積の和がグラフ表示されます。
 
 
 Q1のベース電流、Q2のコレクタ電流のようすと、LEDの順方向電圧降下をグラフに追加します。今のグラフに表示されている電流値とは2桁くらい少ない値なので、同じグラフに表示しても変化の詳細はわからないので、グラフ表示画面を追加します。グラフの追加は次に示すように、グラフ画面を選択した状態で、メニュー・バーの、

   Plot Settings>Add Plot Plane 
   
でグラフ表示面(Plot Plane)を追加し、新たに作成されたグラフ表示面を選択し、

   Plot Settings>Add Trace  
     
でグラフに測定結果を表示します。
 
 
 電源電圧が4.1V以上になると、LEDに流れる電流がほぼ一定の値になっています。
 
 
 グラフ画面のみにして、もう少し詳しく見てみます。
 NSPW500BSのデータシートを確認すると順方向電流の最大定格は30mAで、実際の使用時は20mAくらいが安全です。2N4401のデータシートを確認しておきます。最大定格はVceo=40V、Ic=600mA、Pd=625mWとなっていました。
 電源電圧が4.1Vを超えるとQ1、Q2のベース-エミッタ間電圧がそれぞれ0.6Vくらいになり、それぞれのコレクタ電流も流れ始めLEDへ流れる電流が定電流化されます。
 

 
 
 トランジスタの消費電力は、電源電圧の上昇に応じて増加しています。この定電流回路はリニア制御ですので、LEDで消費されない電力はすべてトランジスタが熱として消費します。効率よい制御を行うためには必要最小限の電源電圧に設定します。電流検出用抵抗をベース-エミッタ間に接続し電流の変化を検出する今回の回路の原理は、多くの場所で利用されています。
 
(2017/6/5 V1.0)
 
 <神崎康宏>
 
バックグラウンド
hfe;トランジスタの電流増幅率。コレクタ電流 (Ic) /ベース電流 (Ib)。feが小文字のときは交流、FEが大文字のときは直流と使い分けることもある。 
N001;SPICEは回路図をネット・リストという書式で記述する。デバイスとデバイスをつないだところをノードと呼び、LTscpiceの回路では隠れているので、ここでは明示的にラベルを付けた。
 

トランジスタの働きをLTspiceで調べる

(1) 第1歩

(2) 実トランジスタ

(3) 2N4401

(4) エミッタ接地

(5) .measコマンド

(6) .measコマンドで測定

(7) .measコマンドでAC解析

(8) .measコマンドでDC解析

(9) 定電流回路