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トランジスタの働きをLTspiceで調べる(4)エミッタ接地

■エミッタ接地トランジスタ増幅回路

 今回からは、一般的なトランジスタの増幅回路を例にLTspiceXVIIで動作を確認します。
 最初に、次に示すエミッタ接地のトランジスタの増幅回路について検討します。

●現物が入手できるトランジスタを利用
 今回は、デフォルトのトランジスタでシミュレーション、検討を行っていきます。そのあと、実際に最近購入したトランジスタでシミュレーションを行います。現物が入手できるトランジスタは、LTspiceXVIIに組み込まれているトランジスタのモデルのリストから2N4401を選択します。このトランジスタは、2016年末に秋月電子通商の通販で購入しました。この現物を用いて、実際の回路でもシミュレーション結果を試してみることを予定しています。

信号源
 信号源はシミュレーションではvoltageを利用します。実際の回路のテストではPCを汎用の信号源にするフリーのソフトウェア Wave Geneを利用します。Wave Geneは実際に利用するときにダウンロードについて確認します。

電源は5Vでテストする
 電源電圧は5Vとします。USBコネクタからも得られ、実際の回路で利用しやすい5Vの電源電圧とします。

コンデンサの役割
 コンデンサC1は交流信号だけ入力し、トランジスタ回路の直流の関係に影響を与えないためのものです。C2の出力に接続したコンデンサも同様な役割を担っています。

トランジスタの動作条件を決める抵抗
 R1、R2の二つの抵抗で、トランジスタのベースに加わる電圧がおおよそ0.6から0.7Vくらいのなるように電圧を決めます。ベースに流れる電流は、この二つの抵抗とR3の抵抗で決まります。R1、R2で電源電圧を分圧してトランジスタのベースに加えられるベース電圧は、次のようになります。

[トランジスタのベース-エミッタ間電圧]+[R3の電圧]



R3により動作が安定する
 トランジスタは、ベース電流が流れだすとわずかなベース-エミッタ間電圧の変化で大きく電流が変化します。この回路では、R3が動作の安定化のために大きな役割を果たしています。

(a)ベース電圧が増加した場合
 ベース電圧が増加すると、

  • ベース-エミッタ間電圧が増加し
  • ベース電流が増加

します。
 併せてhfe倍のコレクタ電流が増加します。R3に流れる電流は、コレクタ電流+ベース電流です。そのため、

  • 増加した電流に相当する分、R3の電圧降下が増加し
  • ベース-エミッタ間電圧が減少し
  • ベース電流も減少し
  • 安定な電流値に収束

します。

(b)ベース電圧が減少した場合
 ベース電圧が減少すると、

  • ベース-エミッタ間電圧が減少し
  • ベース電流が減少

します。
 併せてhfe倍のコレクタ電流も減少し、そのため、

  • 減少した電流に相当する分、R3の電圧降下が減少し
  • ベース・エミッタ間電圧が増加し
  • ベース電流が増加し
  • 安定な電流値に収束

します。

●エミッタにはベースに加えた信号が現れる
 次に示すように、ベースに加わる信号とエミッタに現れる信号の変化は入力信号と同じ位相で、同等な電圧変化となっています。

 青のラインがベースへの入力信号です。信号に無信号時のベース電圧が加算されたものになっています。赤がトランジスタのエミッタからの出力電圧波形です。

●コレクタに増幅された出力が現れる
 この回路で、

R4を通過してコレクタに流れる電流とエミッタから出てR3に流れる電流の差は、
コレクタに流れる電流の1/hfeの電流がベース電流分として追加される


だけです。ほぼ同じ電流が流れているとみなすこともできます。

 次回は、デフォルトのトランジスタから2N4401に変更した場合、入力信号が増大したとき、負荷の大きさで出力がどのようになるかなどの検討を行います。

(2017/2/1 V1.0)

 <神崎康宏>

トランジスタの働きをLTspiceで調べる

(1) 第1歩

(2) 実トランジスタ

(3) 2N4401

(4) エミッタ接地

(5) .measコマンド

(6) .measコマンドで測定

(7) .measコマンドでAC解析

(8) .measコマンドでDC解析

(9) 定電流回路