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初心者のためのLTspice 入門 コイルを利用した電源回路 (2) 電圧制御スイッチで負荷をON/OFFする

電圧制御スイッチを使用する

 電圧制御スイッチ(Voltage controlled switch)と呼ばれるコンポーネントを利用すると、リレーのように電圧のパルスによってスイッチをON/OFFできます。次に示すように、制御電圧を加える-と+の端子とスイッチの端子が二つ用意されています。


 
 コンポーネントSWを回路図上に設置すると、次のようになります。


 
 制御用の±電圧を右側に、加えてプラス端子を上にするためにCtrlキーとRキーを同時に押して90度の回転を2回繰り返します。CtrlキーとEキーで左右反転もできます。しかしプラスの電圧端子が下になるので、90度の回転を2回実施して向きを変えました。

電圧制御スイッチの仕様の設定

 回路図の電圧制御スイッチS1をマウスの右ボタンでクリックして、次に示すComponent Attribute Editorの画面を表示します。SWと表示されているValueの設定を変更します。

 ここで設定するValueは、このデバイスの動作条件を決めるドット・コマンドの .model のモデル名となります。これにより、このデバイスと回路図上の.modelコマンドとを結びつけます。ここでは、次に示すようにtrswと設定しました。

 

 

電流源と置き換える

 前回の電流源を負荷にしたものを、次に示すように5Ωの抵抗負荷とそれをON/OFFする電圧制御スイッチに置き換えました。

 

スイッチ駆動のための電圧源

 電圧制御スイッチS1の制御を行うために、電圧源V2を用意しました。この電圧源から1秒周期で0.5秒の幅をもったパルスを出力します。次に示すように、電源投入後1秒間のディレイのあと、1Hzのパルスを出力するように設定します。

 

SWの設定

 電圧制御スイッチS1の動作条件は、.modelディレクティブで指定します。今回追加した電圧制御スイッチS1の動作条件を設定するためにtrswの値をパラメータとして設定し、.modelディレクティブで電圧制御スイッチの動作条件を次のように指定しました。

   .model trsw SW(Ron=0.01 Roff=10MEG VT=1)

trsw : 電圧制御スイッチのValueで指定した値、この指定でこのディレクティブが回路図のtrswの定義であることを示す

SW() :  SWはこのディレクティブが電圧制御スイッチであることを示す。()中に電圧制御スイッチの動作条件を設定する。デバイスごとに設定されている(help参照)

Ron : スイッチのオン抵抗値はデフォルトでは1Ωなので、負荷が5Ωと低いため、今回はスイッチのオン抵抗が回路に影響を与えない十分小さな値にした

Roff : スイッチのOFF時の抵抗値

VT  : スイッチのON/OFFを決めるスレッショルド・レベルの電圧を設定する。デフォルトでは0V。電圧パルスは0から5Vに増加したときスイッチは閉じるが、5Vから0VになったときはVtの値より小さくならないためスイッチが開かない。デフォルトのVt=0Vではスイッチの開閉を行うためにはプラス/マイナスに振れるパルスを加える必要がある。このスイッチの制御電圧は0~5Vの範囲だからVt=1とスレッショルド・レベルを1Vとした


 ON/OFFの条件設定にヒステリシスをもたせるためVhの設定のほか、シリアル抵抗、コンダクタンスも設定できます。(  )の中に必要なパラメータを設定します。
  次のダイアログボックスでディレクティブの設定を行っています。

シミュレーション時間を2秒にする

 シミュレーション時間を2秒間に設定した結果を示します。
 OUTの電圧(水色)は電源投入時、大きな負荷が加わったときと切り離されたとき、オーバシュートおよびアンダシュートがでています。

 

 上段には各デバイスに流れる電流の様子を示してあります。これで、電圧制御スイッチを使用して負荷のON/OFFを行えるようになりました。当然負荷のON/OFF以外に、スイッチが必要な場所ならどこでも利用できます。

(2018/5/5 V1.0)


<神崎康宏>

 

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