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初心者のためのLTspice入門 LCRを用いた回路の検討(8)電圧依存電圧源で信号を作る

 電圧依存電圧源(Voltage dependent voltage source)は、次に示すように一組の入出力端子をもち、この入出力の関係を関数で定義します。 コンポーネント名はeです。

 

増幅器となる

 このコンポーネントを利用すると、入力信号に設定されたゲインを乗じた出力も得ることもできます。
 回路図のコンポーネントの右下のEの表示をマウスの右ボタンでクリックしてゲインの値を設定すると、設定された増幅率をもつアンプとなります。小数点以下の値を設定すると、入力信号を縮小した出力となります。

反転増幅器

 次に示す左側のコンポーネントは、eのコンポーネントでプラス端子、マイナス端子がコンポーネントの同じ側に配置されています。入力・出力が同じ極性の場合便利です。右側のコンポーネントはe2のコンポーネントで、入出力の端子の極性が反転されているので、反転増幅器など入出力の極性が反転している回路を記述するのに便利です。コンポーネントeとe2は端子の配置が異なるだけで動作は同じでした。

コンポーネントe、e2のテスト

 次の回路で、コンポーネントe、e2の動作確認を行います。ピークが±0.1V、1kHzの周波数の正弦波をV1で作成し、E1ではゲインを0.5、E2ではゲインを2として出力OUT1、OUT2がどのようになるか確認します。E2はコーポ―ネントe2を利用しているので、マイナス入力端子にV1の出力が接続されています。そのため、出力は入力に対して反転していることを想定します。

シミュレーション結果

 赤色のV(n001)がV1からの正弦波の波形、ピンクのV(out1)が入力を0.5倍したE1の出力です。同じ位相でピークが半分になっています。青のV(out2)はコンポーネントe2で2倍のゲインで得た出力波形です。ピーク値は2倍ですが山谷が反転しています。

 

Laplaceオプション

 コンポーネントe、e2はLaplaceオプションが用意されていて、入出力の関係を導き出すために各種の関数以外に伝達関数を利用できます。
 ここでは、次に示すR1とC1で構成されるハイカット・フィルタとR2、C2、R3、C3の2段のハイカット・フィルタの2種類を、CR回路とコンポーネントeのLaplaceオプションを利用したシミュレーションを比較します。

ハイカット・フィルタの伝達関数

 R1、C1で構成されるハイカット・フィルタの伝達関数は次のようになります。

  Vo / Vin = 1/(1 + s CR )


 s はラプラス変換で得られた関数の複素数の変数です。

OPアンプ大全  第3巻
OPアンプによるフィルタ回路の設計 p.115、アナログデバイセズ、 CQ出版社。

 R1C1の回路はR1=1kΩ、C1=0.1μFなので、伝達関数は、

   Laplace = 1 / ( 1 + s * 1000[Ω] * 0.0000001[F] )
        = 1 / ( 1 + 0.0001[Ω][F] * s )


 単位は省略できるので、次に示すE1のLaplaceオプションの設定は、

  Laplace = 1 / ( 1 + 0.0001 * s )

 

R3、C3の回路の伝達関数

 R2とR3の抵抗値に百倍の差があります。そのためR2、C2のフィルタは次段のR3、C3の回路の影響は無視できる範囲としてR3、C3の伝達関数は、

   Vo / Vin = 1 / ( 1 + 100[kΩ] * 0.001[μF] * s )
           = 1 / ( 1 + 100000[Ω] * 0.001[μF] * s )
                        = 1 / ( 1 + 0.0001 * s )

 

 R2、C2とR1、C1は同じで素子の値で、伝達関数は、

  Vo1/Vin = 1 / ( 1 + 0.0001 * s )

  
 Vo1をR2、C2のフィルタ回路の出力電圧とするとR3、C3のフィルタ入力電圧はVo1になり、出力をVoとすると、

  (Vo1 / Vin ) * ( Vo / Vo1)= ( 1 / ( 1 + 0.0001 * s )) * ( 1 / ( 1 + 0.0001 * s ))
                Vo / Vin = 1 / ( 1 + 0.0001 * s ) ** 2


 E2のLaplace オプションは、

   Laplace = 1 / ( 1 + 0.0001 * s ) **2

   
となります。


   

シミュレーションの結果

 R1、C1のハイカット・フィルタのシミュレーション結果、実回路である青のout3の上に式で表した赤のout1の波形が重なり、同一のシミュレーション結果となっています。
 またR2、C2、R3、C3のハイカット・フィルタのシミュレーション結果も、ピンクのout4の上に緑色のout2の波形が重なり同一のシミュレーション結果になっています。実際のフィルタ回路の代わりに電圧依存電圧源と伝達関数で代替えできることが確認できました。

 次回は、各出力に負荷を接続してシミュレーション結果が変化するかどうか確認する予定です。

(2018/8/11 V1.0)

<神崎康宏>

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