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初心者のためのLTspice 入門 コイルを利用した電源回路 (5) ステップアップ・スイッチング・レギュレータ回路(3)

スイッチング周波数、コイルの容量の変えてみる

 今回は、コイルの容量を10μH、50μH、100μHと3種類の容量に変化させます。発振周波数も1/0.0025ms=400kHz、1/0.005ms=200kHz、1/0.01ms=100kHzに設定しました。

ONの時間を演算結果で示す

 スイッチング・パルスの周波数は、パラメータで設定したパルスの周期Xpで設定します。ONの時間を設定するパラメータをそれぞれ0.2(20%)、0.5(50%)、0.8(80%)とし、Xonに設定します。V2のパルスのONの設定を Xon*Xp と数式で記述します。スイッチを駆動する電圧源V2の設定は次のようになります。

 

ステップ動作の組み合わせ

 周期Xpを3種類、ON時間Xonを3種類、コイルXLを3種類の組み合わせで、3×3×3=27種類の組み合わせのシミュレーションが行われます。
 この組み合わせの内容は、SPICE Error Logまたは次に示す「Select Displayed Steps」の確認選択で表示できます。Select Displayed Stepsでは、任意のステップを必要な数選択していくと、それらがグラフに表示されます。

 

シミュレーション結果

 シミュレーションの結果を表示します。出力電圧V(out)の全ステップの結果を表示してあります。出力が安定した段階では、大きく3グループに分かれています。スイッチング・パルスのON時間の、

  • 20%のグループが、一番出力が小さなグループ
  • 50%のグループが、若干それよりも出力電圧が高いグループ
  • 80%のグループでは、それよりも大幅に出力電圧が高いグループ

を作っています。

 それぞれのグループ内での変動が認められます。その変動の要因の確認は、Select Displayed Stepsのリストの中から該当する各ステップを選択表示して確認できます。
 まず、Select Displayed Stepsでステップ9の100kHz、80%、10μH、ステップ18の100kHz、80%、50μH、ステップ27の100kHz、80%、100μHを選択した結果を示します。また、シミュレーション時間を少し広げて7.7msにしてあります。

 L1の値が変わっても同じ出力電圧に収斂しています。
 次に、ステップ8の200kHz、80%、10μH、ステップ17の200kHz、80%、50μH、ステップ26の200kHz、80%、100μHを選択した結果を示します。

 順番に選択していくことで、どのステップのグラフかの確認が容易になります。

 次に、ステップ7の400kHz、80%、10μH、ステップ16の400kHz、80%、50μH、ステップ25の400kHz、80%、100μHを選択した結果を追加します。

コイル、コンデンサの入出力電流を表示

 前回確認したのと同様に、青色のV(n002)のスイッチング・パルスのON時間、灰色のS点の電圧V(s)、緑色のコイルの流れる電流I(L1)、赤色のコンデンサの入出力電流I(C1)を次に示します。表示されているのは、ステップ8の200kHz、80%、10μHの条件です。

ステップ5の50%のONの結果

 スイッチがONの時間が80%から50%になるとコイルに電力を蓄える時間が短くなり、コンデンサおよび負荷に電流を流し切り、コイルからの電流が0になる期間が生じています。

 入力電圧より高い電圧を得て、スイッチングのONの時間の制御でコンデンサおよび負荷に供給する電力をコントロールできることが確認できました。
 実際の回路では、フィードバック回路などが付加されます。それらは、別項で具体的なレギュレータ用のICを用いて確認します。

(2018/5/28 V1.0)

<神崎康宏>

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