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初心者のためのLTspice入門 LCRを用いた回路の検討(2)キャパシタンス(コンデンサ)Cのふるまい

 今回は、LCRのCのコンデンサを対象に、次の回路でその特性を調べます。

コンデンサのAC解析の結果

 1Hzから1GHzピーク値±1Vの正弦波を加えた結果を次に示します。1Hzで-60dB以下、1.5kHzで0dB、1GHzで120dB近くの値になり、周波数の増加とともにコンデンサC1に流れる電流が増大しています。

 1Hz、1kHz、1GHzの電流の値を知るために、次に示すように .measコマンドを設定しました。

コマンドの複写

 最初に、メニュー・バーの .opアイコンをクリックし、.meas AC xcik FIND I(C1) AT 1KHz を入力し、回路図に貼り付けます。ツール・バーのはさみの隣にあるcopyアイコンをクリックしてCopy toolを起動します。Copy toolが起動すると、マウスのアイコンがCopyツールのアイコンに変わります。この状態で複写元をマウスでクリックすると、マウス・ポインタのアイコンが複写元のテキストに変わります。このアイコンをコピー先に移動してクリックすると、コマンドのテキストのコピーが完了します。1Hz、1GHz分の二つのコマンドをコピーします。

コマンドの修正

 最初に設定した1Hzの電流値を求めるために、パラメータ名と電流値を読み取るタイミングの設定を1kHzから1Hzに変更します。変更は変更対象のコマンドのテキストをマウスの右ボタンでクリックしてドット・コマンドのエディタを表示します。ドット・コマンドのエディタは、次に示すように .meas Statement Editorは .measコマンドに特化していて使いやすいものになっています。

 Result Nameに新しい名前を設定し、Pointには元の設定値は入っていません。この項目の修正の必要がなくて空欄になっているので、再設定が必要です。ATの右の欄に1GHzを入力して1GHz分の設定を完了すると、次のようになります。

 シミュレーションの実行後、メニュー・バーのViewを選択してSPICE Error Logをクリックすると、次に示すエラー・ログが表示されます。エラー・ログの中に測定結果が表示されています。

    1Hz の時 -64.0364dB       0.628mA
    1kHz の時  -4.0364dB        0.628345A
    1GHzの時   115.964dB      628345A


となっています。周波数の増加に従い電流値が増加しています。信号源を理想信号源としての電流の供給能力に制限がないので、特性に従い計算するとこのような電流が流れることになります。
 電圧波形と電流波形の位相は、全周波数の領域で90°となっています。

 

過渡解析

 過渡解析を行い、各周波数での電圧波形、電流波形を確認するとともに電流値、位相をみます。シミュレーション・コマンドのテキストをマウスの右ボタンでクリックしてEdit Simulation Commandを表示し,Transientのタグをクリックしてstop time10msに設定します。秒を示す S の単位は省略できます。

 シミュレーション結果を次に示します。抵抗器の場合と異なり、電圧波形と電流波形のピーク位置がずれています。また、電圧波形と電流波形の0の位置にずれがあります。このゼロの位置を合わせます。

 グラフの電圧表示の縦軸をマウスの右ボタンでクリックして、次に示す縦軸の目盛り編集画面を表示します。

 Topを1.8Vから1.4Vに変更し、Bottomを-1Vから-1.4Vに次のように変更します。

 0VとAの軸が同じになりました。

 電圧波形と電流波形のピークの差をわかりやすくするために、時間軸を次のように変更します。
 0から4msの区間を250μsで区切るように設定します。

 グラフ表示のみにして、グラフから値を読み取りやすくしてあります。

 電圧波形と電流波形のピークの差は250μsとなり、波長は1msとなっています。
 この二つの波形の位相は、次のようになります。

    位相 = 360° × 250μs/1ms = 360 × 250/1000
       = 360° × 1/4
       = 90°


 電流波形のピークは +628mAと-628mAとなり、周波数特性の結果と同じになっています。

1Hzの過渡解析の結果

 周波数が低くなっているので、シミュレート時間は4s分の表示としました。

 位相は90°、電流は±628μAとなっています。

1GHzでの過渡解析結果

 周波数が高いので、4サイクル分の期間として4nsとしてあります。

 位相は90°で変わらず、電流値は±628kAとなりました。

キャパシタ(コンデンサ)の充放電特性

 コンデンサに三角波の電圧を加えると、コンデンサの充放電電流は±の定電流となり、電流波形は次に示すようなパルス波形となります。コンデンサに加わる電圧と充放電電流の関係は、次に示すようにコンデンサに加わる電圧の時間当たりの変化 dV/dtとコンデンサの容量に比例し次のようになります。

  I = C × dV/dt = 0.0001 × 1/0.0005
            = 0.0001 × 2000
            = 0.2A = 200mA
   C:  100μF = 0.0001F コンデンサの容量
   dV:  1V      コンデンサに加わる電圧の変化
   dt:   0.5ms    時間 

 キャパシタ(コンデンサ)の抵抗器との特性の違いの一端を確認することができました。キャパシタを利用するためにはこのほかにもいろいろ確認する事項がありますが、それらについては実際の回路の中で検討を進めます。

(2018/6/19 V1.0)


<神崎康宏>

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