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初心者のためのLTspice入門 スイッチング電源ICのシミュレーション(6)LTC3202(1)

白色LED用低ノイズ高効率チャージ・ポンプLTC3202

 LED電源用のICにアナログ・デバイセズ(リニアテクノロジー)社のLTC3202があります。チャージ・ポンプ方式の電池駆動のLEDドライバICです。このICを搭載したLEDドライバのキットもあります。シミュレーション結果と実際の動作の比較も行ってみます。

LTC3202の基本仕様

 LTC3202の基本的な仕様です。ソフト・スタートは、スタート時のコンデンサなどへの突入電流を制限して、過渡的な電流の増大を抑制します。

  • 高出力電流 最大125mA
  • 入力電圧範囲 2.7~4.5V
  • 発振周波数 1.5MHz
  • ソフト・スタート

LTC3202のテスト回路

 まずLTspiceで、LTC3202のテスト回路で動作を確認します。LTspiceを起動し、コンポーネントでLTC3202を選択し、表示されるSelect Component Symbolの画面の「Open this macromodel’s test fixture」をクリックします。

 次に示すテスト回路が表示されます。

基本回路

 乾電池を2本または3本の電源から、白色LEDが駆動できる3V以上の電圧にコンデンサのチャージ・ポンプにより昇圧します。

 R3の抵抗の端子電圧は、LED(D1)に流れる電流に応じて増減します。この電圧をFB端子で検出して、D1に所定の電流が流れるようにVoutの電圧を制御します。D1、R3以外のLEDと電流制限抵抗も同じ組み合わせになっているので、LEDの順方向電圧の範囲内で同じ電流値が流れるものとなります。
 
輝度制御端子 D0、D1

 LTC3202のD0、D1端子は、FBの制御電圧の選択とシャットダウンの制御を行います。D0、D1端子を共にグラウンドに接続したときシャットダウン・モードとなり、出力が停止し、回路の消費電流は1μA以下となります。具体的な設定と結果は後で示します。

シミュレーション結果

 アナログ・デバイセズが提供するLTC3202のテスト回路で、シミュレーションした結果を次に示します。


 

出力電圧(Vout)

 緑色のV(n008)は出力電圧の様子です。0.5msくらいから電圧が急激に立ち上がり、3.0Vくらいから徐々に3.8Vに近づき3.8V以上には上昇せず制限されます。その確認のために、グラフにLEDの両端の電圧差(LEDの電圧降下分)を青色の曲線で表示してみます。

2点間の電圧の差を表示

 LEDの電圧降下分の表示は次にようにして表示しました。回路図のD1とLTC3202の出力と接続されたポイントからD1と電流制限抵抗R3の接続点までマウスでドラッグすると、この2地点間の電圧差がV(N008,N009)のグラフとして表示されます。このドラッグの際、ドラッグの開始点でマウス・ポインタをクリックすると、赤いプローブがその位置に固定され、マウス・ポインタは黒いプローブに変わります。ドラッグの終点でマウスをクリックすると、その二点間の電圧差が表示されます。
 この赤いプローブから黒いプローブの間の電圧、この場合LEDの端子間に加わる電圧は、グラフではV(N008、N009)の青の線で表示されています。

出力電流の制御

 赤のV(N009)は、各LEDの電流制限抵抗の電圧降下分が表示されています。この電流制限抵抗に流れる電流を抵抗で電圧に変換した値をLTC3202のFB端子で検出して負荷のLEDに所定の電流が流れ、それ以上の電流が流れないように制御されています。

出力電流

 LEDに供給される電流は、Voutからの出力電流とC2のコンデンサから供給される電流の合計となります。青色の-I(C2)-Ix(U1:Vout)で表示されています。また、この出力電流は0.94ms以降95mAくらいの一定の電流になっています。
 これは電流制限抵抗に流れる電流が増加し、電流制限抵抗の電圧増加が所定の監視電圧に達したことをLTC3202のFB端子で検出し、出力が制限されたことによるものです。
 この監視電圧は、D0、D1の入力値を設定することで0.2V、0.4V、0.6Vと変更できます。

データシートの呼び出し

 この電流の制限値の変更などを、データシートを呼び出して確認します。
 LTspiceの回路図ウィンドウのリニアテクノロジー社のデバイスのシンボルをクリックすると、次に示すように、「Go to Linear website for datasheet」とリニアテクノロジー社のWebサイトのデータシートにアクセス・ボタンが表示されます。


 
 「Go to Linear website for datasheet」のボタンをクリックすると、次に示すように該当のデバイスのページが表示されます。ただし英文のページにジャンプします。これらの英文のページも多くが日本語化されています。

 上部の地球のアイコンをクリックすると、次に示すように表示する言語を選択するリスト・ボックスが表示されます。

 

 日本語を選択すると日本語表示になります。

 左上にデータシートを呼び出すリストが表示されます。日本語版のデータシートは参考資料となっています。最新のデータシートは英文です。次に示すのは英文のデータシートです。



 日本語版のデータシートを次に示します。

 

最大定格で超えてはならない条件を確認

 このデータシートを読み、最大定格で絶対超えてはならない入力電圧、出力電流の値を確認します。入力、出力端子には-0.3Vから6Vの範囲を超える入出力を行うことができません。マイナス側では-0.3Vまでしか対応していませんから、通常の動作電圧の低いほうの2.7Vをマイナス電源として加えると壊れてしまいます。電源の逆挿しは致命的な結果となるのも、最大定格を見るとわかります。

電気的特性

 電気的特性の表から、動作条件などを確認します。入力電圧は2.7~4.5V、クロックの周波数が1.5MHzであることなどがわかります。これらの仕様はシミュレーションではわからないので、データシートで確認します。

標準性能特性

 標準性能特性のグラフもいくつか用意されています。入力電流と出力の負荷電流の関係、短絡時の動作などの概要を確認できます。

D1、D0のピン機能

 D1、D0の設定と、出力およびFBの出力は次のようになります。

D1 D0 FBの設定電圧 [V]
0 0 シャットダウン
0 1 0.2
1 0 0.4
1 1 0.6

 D1、D0の入力を入力電源に10kΩでプルアップしました。次回にはD1、D0の設定を変更して確認します。

 

①最初の2ms
 最初の2msは、D0、D1が共に0Vでシャットダウン状態になっています。
②2msから4ms
 この期間は、D0が3VのHigh、D1が0VのLowなので、フィードバック回路設定電圧は0.2Vになり、LEDに流れる電流は次のようになります。
   0.2V/36Ω=0.00556A=5.56mA
③4msから6ms
 この期間は、D0が0VのLowで、D1が3VのHighなので、フィードバック回路設定電圧は0.4Vになり、LEDに流れる電流は次のようになります。
   0.4V/36Ω=0.0111A=11.1mA
④6msから8ms
 この期間は、D0が3VのHighで、D1が3VのHighなので、フィードバック回路設定電圧は0.6Vになり、LEDに流れる電流は次のようになります。
   0.6V/36Ω=0.01666A=16.7mA
 それぞれシミュレーション結果でこれらの電流値が再現されています。また設定が切り替えられたときの動作はシャットダウン時、電源投入時と同様に一度出力が0Vになり、ソフト・スタートにより設定電圧まで時間をかけて上昇します。最大電流の設定のとき、約500μsの時間をかけて設定電流に達します。

(2018/9/27 V1.0)

 <神崎康宏>

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