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初心者のためのLTspice入門 ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割 (3) バンドパス・フィルタの出力の減衰とOPアンプの増幅率の関係

ウィーン・ブリッジ回路にOPアンプを組み込む

 次に示すように、ウィーン・ブリッジ回路にOPアンプを組み込み、ウィーン・ブリッジ発振回路を構成します。

バンドパス・フィルタの減衰率は1/3

 次に示すウィーン・ブリッジ発振回路のCT1、RT1、RT2、CT2で構成される回路は、OUTを入力としてIN+を出力とするバンドパス・フィルタとなっています。またバンドパス・フィルタを通過する中心周波数の信号は、OUTの信号の1/3に減衰しています。

 このバンドパス・フィルタの中心周波数の信号をOPアンプで3倍以上に増幅すると、その出力は再びOPアンプのプラスの入力信号となり、増幅を繰り返します。その結果、バンドパス・フィルタの中心周波数で発振します。OPアンプの増幅率は、ウィーン・ブリッジ回路のRA1とRA2の値で決まります。これらの値をシミュレーションで変化させ、発振の様子を確認します。

増幅回路の増幅率は3以上

 ウィーン・ブリッジ発振回路の増幅器の増幅率は、負帰還回路のRA1とRA2のインピーダンスの設定で決まります。またOPアンプは非反転増幅器として働くので、増幅率は次の式で求められます。

        増幅率=(RA1+RA2)/RA1 > 3
RA1=5k、RA2=10kで (10k+20k)/ 10k =3
            (9.9k+20k)/9.9k=3.02020202


 この条件で3以上の増幅率が確保できるので、次のウィーン・ブリッジ発振回路が発振するかをLTspiceでシミュレートしてみます。

 

 LM358/NSでテストしています。テキサス・インスツルメンツのWebページからSPICEのモデルを入手できます。他社のSPICEモデルを組み込む具体的な方法を次に示してあるので、参照してください。


 過渡解析のシミュレーションの設定は、

  .tran 90m startup


 電源の投入から30msのシミュレーション時間を設定しています。startupの指定は、電源の立ち上がりの状態を指定しています。startupを指定すると、電源はシミュレーション開始時には0Vから開始します。

 

 電源が投入されると、発振を開始して65ms後以降は一定の振幅になっています。この状態を拡大すると次に示すように波形が飽和して、上部の波形が少しつぶれています。

R1の値を変化させ増幅率を少し変化させてみる

 R1の値を変数XRとして定義します。この変数を9.9kΩから10.05kΩまで0.05kΩ刻みの抵抗値でシミュレーションします。9.85kΩ、9.95kΩ、10.0kΩ、10.05kΩとなります。
 そのためにはR1の抵抗値を9.9kから変数{XR}に変更し、.stepコマンドを次のように設定します。

  .step param XR 9.9k 10.05k 0.05k


 シミュレーション結果を次に示します。

 回路のわずかな変動で生じたノイズなどをもとに正帰還回路のフィルタで所定の周波成分のみを選択し、OPアンプの増幅回路で増幅を繰り返し安定な発振を持続しています。
 緑色の9.9kΩと青色の9.95kΩは発振しています。10kΩと10.05kΩでは発振が停止しているようです。

R1が10kΩ、10.05kΩの場合

 R1が10kΩの赤は、増幅率が3での正帰還回路フィルタの減衰率を補っても全体の増幅率が1以上にならず、徐々に減衰し発振が停止します。10.05kΩの青緑の増幅率は3以下なので、90msくらいの間に減衰して発振が停止しています。
 この様子を確認するために、シミュレーション時間を300msにして、グラフの表示範囲を±40mVとしてステップ3、4の10kΩ、10.5kΩの結果を表示しました。

 最初に外乱などにより生じた信号は、増幅率が3を超えない場合は増加することなく減少を続け最後は停止しています。青緑の10.05kΩの場合の増幅率は2.99、10kΩの場合は増幅率3で、停止まで少し時間がかかっています。
 R1の値を9.96kΩ、9.97kΩ、9.98kΩ、9.99kΩ、10.00kΩにしてシミュレーションしてみます。.stepコマンドの開始値を9.96k、終了値を10.0k、刻み幅を0.01kと、次のように設定しシミュレーションしました。R1が9.99kの時発振が安定するまで時間がかかることが想定されるので、シミュレーション時間は1500msとしました。

  .step param XR 9.96k 10.0k 0.01k

 R1が9.99kΩの場合、安定な発振までの時間が少し長くなっています。R1が10kΩでは発振は停止してしまっています。
 発振が安定したときの各波形の様子を、時間軸を拡大して次に示します。拡大すると各ステップの発振開始時の状況が同一でないのでわずかのずれがありますが、ほぼ同じ波形となっています。

 R1の値は明るい緑が9.96kΩ、青が9.97kΩ、赤が9.98kΩ、濃い緑が9.99kΩです。心持ち濃い緑が一番滑らかなように見えます。

OPアンプをLM358に変更した場合

 R1が9.90kΩ、9.95kΩで発振し10.0kΩ、10.05kΩでは発振していません。

 10.05kΩの発振の状況を抜き出したもので、最初は±25mVくらいの波形が徐々に減衰し、発振が停止するのが確認できます。

 シミュレーション結果を電圧のスケールを拡大すると、R1が10kΩ、10.05kΩでもシミュレーション開始時には数十mVの波形が生じていますが、OPアンプの増幅率が足りなく発振が継続できなかった様子がLM358のシミュレーション結果でも確認できました。

 ステップの選択表示でR1の各設定値の波形の状態を確認し、拡大表示して波形のつぶれなどの有無を確認してみてください。
 次回それらを確認し、続いて実際の回路で試してみます。まだまだ課題があるのが見つかります。

(2018/10/17 V1.0)


<神崎康宏>

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ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割

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(3) バンドパス・フィルタの出力の減衰とOPアンプの増幅率の関係

(4) ウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させる

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