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初心者のためのLTspice入門 ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割 (4) ウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させる

 OPアンプをプラス電源だけで動かすことができると、実験も容易になります。プラス・マイナスの直流域までのデータを扱う場合は、正負二つの電源が必要です。しかし、交流信号だけを扱う場合は単電源でも動きます。今回はウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させることを考えます。

OPアンプのプラス入力を1/2電圧に接続 

 ±2電源の場合はGNDが基準で、プラスの入力端子を抵抗でGNDに接続します。単電源で動作させる場合は、電源を1/2にした電圧を基準にします。そのために、次に示すように、R4の10kの抵抗をR4、R5の二つの抵抗にして、R4はそのままGNDに接続し、もう一方のR5を電源に接続します。これにより、OPアンプのプラスの入力端子は電源電圧の半分の電圧が加わります。そしてR1とGNDの間にC3のコンデンサを挿入すると、OUTの電圧はプラスの入力電圧と同じ電源電圧の1/2の電圧になります。
 この対策で、電源電圧の1/2の電位が仮想アース電位となり、交流信号はこの電圧を中心に上下に変動します。

 R5の抵抗を追加して、R5とR4の抵抗で電源電圧を1/2に分圧して基準電圧を作っています。電源のインピーダンスは無視できるほど小さいものとみなされます。
 そのため、R5の抵抗とR4の抵抗は、抵抗値が無視できる電源で接続されているものとみなされます。その結果、R5とR4はフィルタ回路の中で並行に接続されている抵抗とみなされ、R4=R5なので、フィルタ上の等価抵抗は10kΩの1/2となります。

フィルタの特性を確認

 R5を追加した場合の元10kΩの場合、2倍の20kΩの場合と、比較するため10kΩでR5を追加しない場合、各回路の周波数特性がどのようになるか、次の回路でシミュレーションしました。

シミュレーション結果

 10kΩのR5を追加した回路のシミュレーション結果は、赤のV(in+1)です。位相が0度のときは2kHzを超えたポイントになっていて、ピークの減衰値も-10dB以下の値になっています。R5、R4が20kΩの回路は青のV(in+2)です。R5を追加していない±2電源の回路は緑のV(in+0)のシミュレーション結果で、青のラインに緑のラインが重なり同一の結果となっています。


 
 
ピーク値、周波数を. measコマンドで求める

 . measコマンドで各シミュレーションの電圧値のピーク値を求め、求めたピーク値が生じたときの周波数を次の . measコマンドで求めています。

 .meas AC AN1 MAX V(in+1)
 .meas AC AN2 MAX V(in+2)
 .meas AC res1 when V(in+1)=AN1
 .meas AC res2 when V(in+2)=AN2
 .meas AC res0 when V(in+0)=AN0


 シミュレーションを行った後、メニュー・バーの View>Spice Error Logを選択して、次の結果を表示します。


 
 
. measコマンドの測定結果

  電圧[dB] 周波数[Hz]
IN+1 -12.04 2244
IN+2、IN+0 -9.54 1586


 
 単電源のウィーン・ブリッジ発振回路とするためにはR4、R5を2倍の20kΩとします。
 実際の回路は次のようにしました。R6は多回転の半固定抵抗でゲインの調整を行います。


 
 シミュレーション結果は、次に示すように少し時間がかかりましたが発振しています。


 
 
部品を集める

 具体的なテスト回路を組み立てるために、次に示す部品を集めました。

部品名 型番、値 個数 回路図上の記号
OPアンプ LM358N 1 U1
カーボン抵抗 1/4W 10kΩ 2 R3、R1
1/4W 20kΩ 2 R4、R5
1/4W 33kΩ 1 R2
1/4W 3.3kΩ 1 この二つでR6
半固定抵抗(多回転) 5kΩ  
積層セラミック・コンデンサ 0.1μF 2 C1、C2
10μF 1 C3
ブレッドボード BB-801
(秋月電子通商)
1  
ブレッドボード用DCジャックDIP化キット(秋月電子通商)   1  

 
 この他に、5VのDC電源が必要です。


 
回路をブレッドボードに実現する

 回路図に従い、次のようにブレッドボード上に組み立てました。


 
 部品の数があまり多くないので、回路図の部品と照らし合わせて、どのような配線になっているか確認してください。回路図に従っていれば、必ずしもこの配置でなくてもよいです。
 LM358Nのピン配置を次に示します。このパッケージにはOPアンプが2回路格納されています。今回はAのOPアンプに配線しています。出力は1番ピン、反転入力(マイナス入力)は2番ピン、正帰還になる非反転入力(プラス入力)は3番ピンです。図は上から見た(Top View)ピンの配置です。


 
 電源を投入して出力をオシロスコープで確認すると、次に示すように発振波形が確認できます。


 
 少し苦労しますが、半固定抵抗を調整すると次に示すように滑らかな波形を得ることもできます。


 
 あまり安定性が良くありません。次回は、引き続き回路の検討をします。

(2018/10/28 V1.0)

 <神崎康宏>

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ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割

(1) 低周波の正弦波発振回路

(2) ウィーン・ブリッジ回路各様の特性を.measコマンドで測定

(3) バンドパス・フィルタの出力の減衰とOPアンプの増幅率の関係

(4) ウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させる

(5) ウィーン・ブリッジ発振回路に振幅の制限回路を付加する

(6) ウィーン・ブリッジ発振回路を実際の回路で確認する