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初心者のためのLTspice入門 ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割 (7) ウィーン・ブリッジ発振回路を実測したCRで確認する

C、Rの各パーツの特性値を実測する

 今まで、C、Rの特性値は表示値をそのまま利用してシミュレーションしていました。今回は、各々の特性値を実測して、その値で再度シミュレーションします。測定は、秋月電子通商で購入したLCRメータDE-5000を使用しました。
 各CRの実測値を次の回路図に示します。R6の値だけは特性値には大きな影響を与えないので、表示値のままになっています。
 各ステップ動作について20kΩ、100kΩ、220kΩのときの各素子を、実測値でシミュレーションしたときの様子と実際の回路の結果を比べます。

(この回路の発振周波数はf =1/(2π×sqrt(C1×C2×R3× (R4+R5)/2))となり実測値とほぼ同じになりました)

 シミュレーションの結果、それぞれのステップで次のような波形が得られました。R7が19.72kΩのステップ1は緑の波形で、ピークtoピークは1.04Vとなっています。99.28kΩのステップ3は赤の波形でピークtoピークは1.84V、214.7kΩのステップ4は濃緑の波形で、ピークtoピークは2.04Vとなっています。

R7が100kΩのとき(実測値99.28kΩ)

 次に示すのは、R7が表示値100kΩの時の実際の発振出力波形です。振幅の幅を示すピークtoピークの値は1.26Vと、シミュレーション結果の1.84Vには及びませんが、R7の抵抗値の増加に従い波形の振幅が増大しています。
 発振周波数は1.391kHzとなっています。

 シミュレーション結果のFFTの実行例を次に表示します。
 グラフ画面に任意のテキストを表示できます。各ピークの周波数をグラフに追加してみます。

 テキストの追加は次に示すように、グラフ画面をマウスの右ボタンでクリックして、リストの中のDrawを選択し表示されるリストの「Aa Text」を選択します。

 

 グラフ画面を選択し、メニュー・バーの「Plot Settings」を選択し、リストの中から「Notes Annotations」を選択すると、表示されるリストからも「Aa Place Text」を選択できます。
 「Aa Place Text」を選択すると、次に示すようなグラフ画面にテキストをするための画面が表示されます。グラフから読み取ったピークの値、1.382kHzをセットします。デフォルトではテキストの色がグレイです。わかりやすくするためにColorのリストを表示し、赤を選択しました。

 各ピークの値を表示しました。

 各素子の値を実測値に設定し直してシミュレーションしなおしたので、発振周波数はほぼ一致した値の1.38kHzになっています。
 実際の回路のFFTの結果も、次に示すように基本周波数の波形の周波数が1.4kHz前後で2倍の周波数の2.7kHz前後に小さなピークが認められます。

R7が220kΩのとき(実測値214.7kΩ)

 R7の設定を実測値で214kΩの抵抗を接続して、測定した結果とシミュレーション結果を示します。
 波形のピークtoピークの値も1.94Vと、シミュレーション結果2.04Vに近い値になっています。波形は大きくなった分、ひずみも大きく頭の部分が欠けています。このひずみの増大が、FFTの結果にどのように現れているか試します。

 FFTの結果は、次に示すように基本周波数の2倍、3倍の倍音の周波数以外の成分も多く生じています。

 

 比較のために、R7が20kΩの実際の回路のFFTの波形を次に示します。基本周波数の3倍の周波数のピークはありますが、それ以外の周波性成分は低く抑えられています。

 コンデンサや抵抗などの素子の容量や抵抗値は、それぞれの表示された値通りでなく、コンデンサでは20%くらい、抵抗でも10%のバラツキがあります。増幅度を決めるフィードバック回路の抵抗やフィルタ回路のなどのコンデンサや抵抗などの選択は注意します。これらの調整のため抵抗の一部を可変抵抗にして、目的の特性を得ることができます。
 またLTspiceでは素子のバラツキ、温度変化による特性値の変動で回路の特性がどのように変わるかも検討することができます。これらについては別の項で調べていきたいと思います。

(2018/11/17 V1.0)

 <神崎康宏>

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ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割

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(4) ウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させる

(5) ウィーン・ブリッジ発振回路に振幅の制限回路を付加する

(6) ウィーン・ブリッジ発振回路を実際の回路で確認する

(7) ウィーン・ブリッジ発振回路を実測したCRで確認する