初心者のためのLTspice入門 OPアンプを利用したフィルタ回路のシミュレーションと実測(3) コンデンサにはインダクタンス成分もある
次のCRの周波特性を、LTspiceシミュレーションしました。次に示すように、30MHzまで一様に出力は減衰しコンデンサのインピーダンスが減少していることを示しています。
コンデンサは秋月電子通商で購入したムラタの積層セラミック・コンデンサ0.1μF、50V(RDEF11H104Z0K1H01B)を使用しています。LTspiceXVIIに用意されているコンデンサに、ムラタのこのコンデンサがあるか確認しました。
回路図上のコンデンサのシンボルをマウスの右ボタンでクリックすると、次のコンデンサの等価回路の各特性値などを設定する画面が表示されます。
「Select Capacitor」ボタンをクリックすると次に示すように、LTspiceが用意した各社のコンデンサが表示されます。
ムラタの0.1μF 50Vのコンデンサもありましたが、型番が異なります。購入した型番のコンデンサが見つからないので、次のコンデンサを選択しました。
このリストの見出しをクリックすると、その項目でソートされます。C[μF]をクリックして容量順に並べています。ここで用意されているコンデンサのシミュレーションで使用する特性値は、容量とシリアル等価抵抗(ESR)だけです。
前回ADALM2000とscopyで測定した結果は、次に示すように3MHzで減少していたコンデンサの端子電圧が増加し始めています。この原因を確認します。
●高い周波数領域ではコンデンサのインダクタンス成分は無視できない
コンデンサにもわずかですが、インダクタンスの成分があります。したがって、その部分を追加すると、次のようなコンデンサに直列にインダクタンスの成分が接続されたモデルが想定されます。
直列に接続されたLC回路では、共振周波数でインピーダンスが最小となります。また、そのときの各素子の特性値と共振周波数の関係は、次のようになります。
f = 1 / (2 × π × sqrt(C × L)) f : 共振周波数 Hz C : コンデンサの容量 F L : コイルのインダクタンス H |
実測値では3MHzくらいで出力が最小になっています。コンデンサの容量を0.1μF、共振周波数を3MHzとしてLの値を計算すると、次のようになります。
L = 0.0281 μH |
この値を設定して、シミュレーションを行った結果を次に示します。
実測値の周波数特性は-90dBくらいまでの現象ですが、シミュレーションでは-110dBまで減少している以外は、ほぼ同じ結果が得られています。
この結果の分析のため、抵抗とコンデンサの接続点(outc)、コンデンサと等価直列インダクタンスの接続点(outl)、コンデンサの端子間電圧のシミュレーション結果を測定しました。
青色の線はoutlの等価直列インダクタンスの電圧降下分です。周波数の増加に応じてコイルのインピーダンスも増加し、出力電圧も増加します。赤のoutcの線は等価インダクタンスも含めたコンデンサの電圧降下分で、共振周波数の3MHz近辺まではコンデンサ分のインピーダンスの低下が大きいので出力電圧も低下します。共振周波数では大きくインピーダンスが小さくなるので出力電圧も大きく低下します。
共振周波数以上になると、等価インダクタンスのインピーダンスが大きくなり主要な要素となるので、周波数の増加に伴い出力も増加します。
ピンクのV(outc,outl)は、コンデンサの両端の電圧で等価直列インダクタンスの影響を受けていません。コンデンサのみの電圧降下で最後まで周波数の増加に応じて電圧は小さくなっています。
●コンデンサの特性値で等価直列インダクタンスを設定
次に示すように、コンデンサの特性値の設定画面には、Equiv.SeriesInductance[H]と等価直列インダクタンスの設定ができるようになっています。ここに先ほど設定した0.0281μHを設定します。
次に示すように、等価直列インダクタンスの設定を行うと、インダクタンス成分の影響を考慮したシミュレーションが行われます。
コンデンサのシミュレーション・モデルを製造メーカも用意しているものもあります。次回それらを確認します。
(2019/1/20 V1.0)
<神崎康宏>