初心者のためのLTspice入門 OPアンプを利用したフィルタ回路のシミュレーションと実測(7)単一電源で動作させる
OPアンプLT1006を単一電源で動作させるために、LTspiceXVIIに用意されているLT1006のmacromodel’s test fixtureを展開し、シミュレーションを行いました。
シミュレーション結果は、次のようになりました。出力信号は500mVのラインを中心に上下100mVの振幅の正弦波の波形となっていました。
●入力信号を別ペインで表示して見やすくする
入力信号も確認するために表示します。しかし、出力信号の1/100の大きさなので、同じグラフ領域に表示してもよくわかりません。そのため、入力の用のペインに入力信号のみ表示することにします。
メニューバーのPlot Settings >Add Plot Pane |
を選択します。新しいペインが表示されます。
●Traceの追加
新しく追加されたペインの表面をマウスの右ボタンでクリックすると、リストが表示されます。そのリストの中のAdd Tracesを選択すると、次の画面が表示されます。この中から入力信号のV(in)を選択し、OKボタンをクリックします。
OKボタンをクリックすると次に示すように、青の入力信号、赤の出力信号がそれぞれのペインいっぱいにグラフ表示されます。
ピークのサイズをわかりやすくするために、グラフのみの表示にしました。
●入力
入力は5mVを中心に4mVから6mVの振幅があり、5mVを中心軸とする±1mVの正弦波であることが確認できます。
●出力
出力は400mVから600mVで500mVを中心軸とした±100mVの振幅の正弦波となっています。
●増幅率
非反転増幅器で、増幅率は負帰還回路の抵抗R1、R2から次のように計算されます。
(R1+R2)/ R2 = (99+1)/ 1 = 100 |
とVinの入力電圧の100倍の出力電圧が得られることが想定されます。入力が±1mVで出力は、その100倍の±100mVなっていました。
●オフセット電圧
V3の信号源は、5mVのオフセット、振幅は1mV、1kHzの周波数に設定されています。その内容は、次に示すように設定されています。
●DC offsetを0にすると
信号源のDC offsetを0にしてシミュレーションを行うと、次に示す結果が得られました。出力は±の波形のマイナス側の波形はカットされ、+部分の波形についても30mVくらいカットされた波形になっています。
入力信号は、DCオフセットが付加されたときと同じ±1mVの正弦波となっています。
単一電源でOPアンプを動作させると、マイナス側の入力は - 電圧と認識しません。プラスの入力電圧に対しての出力電圧の様子を調べるために、入力を0Vから5mVまで2ms上昇し0Vまで2ms下降、を繰り返すようにPWLで設定します。
この設定でシミュレーションを行った結果を次に示します。
入力信号のペインで青のラインが入力で0mVから5mVまで直線で変化しています。出力側のペインには入出力関係をわかりやすくするために、緑色のV(in)*100と入力値を100倍したラインとなっています。
OPアンプの出力が30mVくらいのオフセット出力があり、入力値を100倍した値が30mV以下の入力値に対して、次に示すようにオフセットの30mVの出力となっています。
●DCに対応した増幅率100倍のアンプ
V3からの入力信号0Vから40mVに対して、0Vから4Vの出力を得ることができます。ただし、オフセット出力のため0Vから30mVまでの間は入力のいかんにかかわらず同じ値になります。
DC出力のセンサなどの増幅には、オフセットが無視できる範囲を選んで利用することになります。交流信号の増幅のみを考えた場合は、コンデンサを追加することで容易に単電源の増幅器を構成できます。その場合、信号の帯域により適切なコンデンサを選択する必要があります。次回検討します。
(2019/3/14 V1.0)
<神崎康宏>