初心者のためのLTspice入門 フィルタ回路の再確認(7)R3の値を100kΩに変更して実際の回路と比較する
オールパス・フィルタの実際の回路で、R3の値を前回の10kΩから100kΩに変更して実際の回路で位相の様子をADALM2000で確認し、次に示すLTspiceのシミュレーション結果と比較します。
LTspiceによるR3を100kΩにしたAC解析の結果は、次のようになります。位相が90°になるときの周波数は1.59kHzくらいになっています。
●過渡解析で入力、出力の位相によるずれ
LTspiceでR3を100kΩにしたときの過渡解析を行った結果を次に示します。入力と出力の時間のずれは、15kHzの信号で約31μsになっています。これらの結果と、実際の回路でのADALM2000の測定結果と比較します。
実験回路は、前回のR3を100kΩにしただけで、ほかの部分はすべて同じです。
オシロスコープの波形です。
Network Analyzerの測定結果を次に示します。カーソル1を90°の位相に合わせて、そのときの周波数の値をF1から読み取ると1.55kHzとなっています。LTspiceのシミュレーションでは1.58kHzとなっていて、ほぼ同等な結果です。カーソル2を180°の位相に合わせてF2の周波数を確認すると、38.6kHzでした。LTspiceでは32kHzくらいで少し違いがありますが、この領域では変化が少ないので部品のばらつきの範囲でないかと考えています。
●OPアンプをLT1115に変えてみる
OPアンプをLT1006から高域のゲインが大きなLT1115に変更して、周波数特性、位相のずれがどのようになるか確認します。
次に示すように、変更した後のLTspiceの周波数特性は、位相が90°時は1.55kHzとLT1006とほぼ同様な結果が得られました。
実際の回路でLT1115に変更し、確認した周波数特性の結果を次に示します。90°の位相時の周波数は1.53kHzで、LT1006と同等の結果が得られました。
●LTspiceで過渡解析を行う
LTspiceで、15kHzの信号入力で過渡解析を行った結果を次に示します。
赤の入力信号はきれいな正弦波です。しかし、青の出力は高い周波数の波形が重なったものになっていました。OPアンプが発振し高域の発振波形が重なったと考えられます。
ADALM2000で、実際の回路に15kHzの信号を加え出力信号をモニタした結果を次に示します。
紫色の出力信号は15kHzの信号に発振波形が重畳し太い信号となっています。時間軸を拡大して発振波形を確認すると次のような波形が表示されました。
次回、LT1006とLT1115の違いをデータシートなどで確認し、発振の対策を検討します。
(2019/11/12 V1.0)
<神崎康宏>