初心者のためのLTspice入門 フィルタ回路の再確認(8)OPアンプの発振を止める
前回、OPアンプをLT1006からLT1115に変更すると、LTspiceのシミュレーション結果も実際の回路でも発振しているのが確認できました。
●OPアンプの裸のゲインを調べる
LTspiceで、LT1006とLT1115の外部回路を付加しないOPアンプのみの回路のゲイン(増幅率)の様子を調べます。次に示すように、LT1006に正負の5V電源と周波数特性を調べるための正弦波の発振源となるV3を用意します。次にLT1006のシミュレーション回路と結果を示します。AC解析で0.01Hzから10MHzの特性を調べました。
最大130dBの増幅率から、0.2Hzくらいのカットオフ周波数で周波数特性が-6dB/octの減衰率で低下しています。また、550kHzくらいでゲインも0dBとなります。位相が180°を超えるときにはゲインはマイナスになっています。
●データシートでLT1006のゲインを確認
回路図のLT1006のシンボルをマウスの右ボタンでクリックして、表示されるリストから「Go to Analog’s website for datasheet」を選択し、アナログ・デバイセズのWebページにジャンプするとデータシートが表示されます。次に示すように、裸のゲインの周波数特性もLTspiceのシミュレーション結果とほぼ同様な結果となっています。
●LT1115の裸の周波数特性を調べる
LT1115のゲインの周波数特性は、LTspiceのシミュレーション結果で、
- カットオフ周波数が2Hzで
- ゲインは10MHzの周波数でも3.5dBのゲインがあり
マイナスになっていません。
LT1115は、LT1006に比べ20dB増加した150dBのゲインをもち、カットオフ周波数も10倍高域の2Hz、1MHzのゲインも約35dBと高域の特性が向上しています。
LT1115のデータシートのゲインの特性は、次に示すようにLTspiceのシミュレーション結果と同様な値となっていました。
●発振を止めるためC2を追加
発振を止めるため、R2の負帰還抵抗にパラレルにC2のコンデンサを追加しました。容量が大きいと高域のゲインが低下します。C2のコンデンサを3pFにしたシミュレーション結果を示します。
C2を3pFにした場合は発振が停止し、きれいな出力波形が得られました。C2の値を1.5pFまで下げても発振しませんが、C2の値を1.4pFにすると次に示すように高域の発振が認められます。
●実際の回路での確認
実際の回路で、発振止めのC2を追加した場合の様子を、ADALM2000で確認します。C2の値を3pFにした場合の実測データです。
LTspiceの過渡解析では、高域で発振しているのが確認できました。その発振を止めるために負帰還回路に小容量のコンデンサを追加し、効果をLTspiceで確認できました。また同じ回路でもOPアンプの特性によって回路が発振することも確認できました。
(2019/11/27 V1.0)
<神崎康宏>