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初心者のためのLTspice入門 フィルタ回路の再確認(2)フィルタの効果を調べるための信号の作成

 今回は、フィルタ回路の効果を確認するために複数の周波数の信号を合成したり、全域の周波数が含まれたホワイト・ノイズの信号源の作成方法を検討します。

B. Arbitrary Behavioral Voltage or Current Sources

 LTspiceの電圧源(電流源)には、Arbitrary Behavioral Voltage Sourceと呼ばれるいろいろな関数を組み合わせて多様な出力形態を示すことのできる電圧源と電流源が用意されています。各種の三角関数のほかに多様な関数が用意されています。ホワイト・ノイズを作成するためのランダム変数を発生するwhite(x)関数も用意されています。このBVの利用法はホワイト・ノイズの生成、waveへの保存、再生なども、次に示すページで触れていますので、そちらも参照してください。

初心者のためのLTspice 入門
 シミュレーション結果を保存しその結果を利用する(3)
BVコンポーネントでいろいろな信号を作る

https://www.denshi.club/ltspice/2018/04/ltspice-3-1.html

複数の周波数の成分を含んだ信号

 BVでピーク値が±1V、1kHzの正弦波の信号を作ります。BVでは関数の出力を、コンポーネントの出力とすることができます。また、関数の出力も、いろいろな演算を施せます。
 次に示すように、Select Component Symbolの画面からbvを選択します。
 

 回路図画面に配置すると、次に示すようになります。V=F(...)の右辺に、関数または関数に演算処理を施した式を設定します。

 関数や式の設定は、シンボルをマウスの右ボタンでクリックすると表示される「Component Attribute Editor」でValueの項目を設定することで行います。このエディタは、左側にAttributeの各項目名、右側が入力欄になっています。該当するアトリビュートの入力欄をマウスでダブルクリックすると、入力編集ができるようになります。


 ここには1kHzの正弦波を発生する関数を設定します。シミュレーションの経過時間がtimeで与えられます。このtimeを利用して、

  sin(2 * pi * time)

   pi : πを呼び出す定数
   time : 秒(sec)が単位のシミュレーションの経過時間


 この関数の設定では1Hzの正弦波が表示されます。1kHzの周波数を得るには1秒間に1000の波形の発生が必要なので、timeを次に示すように周波数倍します。

  sin(2 * pi * 1k * time)


 シミュレーション結果は次のようになります。
 sin()関数は2πの間で±1の間を変化します。シミュレーション結果は周期が1ms、波高値が±1Vの正弦波となっています。±1V以外の波高値が必要な場合は、係数を掛けて補正します。


 VB2は3kHzの正弦波を出力するように、次のように設定します。

  sin(2 * pi * 3k * time)

 シミュレーション結果を次に示します。

 V(VB1)は±1の正弦波が出力されていますが、V(VB2)の3kHzの正弦波の波形は±1Vの大きさになっていません。波形の詳細を拡大してみると、次に示すようにピークの波形が滑らかでなく少しひずんでいます。


次に示す過渡解析の設定値のmaximum time stepの値を1.5μsに設定しました。


 その結果、次に示すように高い周波数の方の3kHzの波形も±1の想定通りの正弦波になりました。

VB1とVB2を加算したVB3を作る

 VB3の出力の設定は、

  V=V(VB1) + V(VB2)

の演算処理を設定するだけです。

 シミュレーション結果は次のようになります。上段のグラフのペインにはVB1の1kHzの正弦波とVB2の3kHzの正弦波を書き込みました。下段のペインにはこの二つを加算したVB3の波形を表示しました。

 1kHzの正弦波のピークが3kHzの正弦波の影響で二つの山になっています。シミュレータによる計算結果ですので、このようにきれいに位相がそろって加算された結果になっていますが、実際の回路では位相のずれが生じ、もう少し複雑な波形になります。
 位相をずらすのは簡単で、次のようにpiを加算するだけで半波長分右にずれます。

  V=sin(2 * pi * 1k * time + pi)

 テストしてみてください。

VB3をローパス・フィルタにかける

 前回テストした2次のパッシブ・フィルタにVB3の信号を通してみます。

 シミュレーション結果は次のようになります。

  ピンクのV(out5)は3kHzの成分が減少して1kHzのプラス/マイナスのピークの谷が大幅に減少し谷への落ち込みがなくなっています。
  一方、緑のV(out4)は1次のフィルタを通過しただけですので、3kHz正弦波の成分の減少が少なく、ピークの谷がまだ残っています。
 次回はホワイト・ノイズを作成し、フィルタ通過前と通過後の音を聞くなどを行ってみようと考えています。

(2019/6/4 V1.0)

<神崎康宏>

初心者のためのLTspice入門

フィルタ回路の再確認

(1) CR回路ローパス・フィルタを2段接続すると

(2) フィルタの効果を調べるための信号の作成

(3) ホワイト・ノイズをフィルタにかけると


◆オームの法則を確認する

(1) 抵抗の設定...(4) 回

◆オームの法則で回路に任意の電圧を作る

(1) 抵抗分割...(4)回

◆LTspiceXVIIはUNICODEに対応して日本語表示もできる

(1) LTspiceXVIIで日本語を表示...(3)回

◆シミュレーション結果を保存しその結果を利用する

(1) WAVEファイルにする...(5)回

◆AC電源から直流電源を作る

(1) ダイオードによる整流回路...(5)回

◆ダイオードの動作確認

(1) ダイオードのモデル

◆コイルを利用した電源回路

(1) チョーク・インプット型全波整流回路... (5)回

◆LCRを用いた回路の検討

(1) 抵抗器(レジスタ)では交流信号の周波数が変わっても抵抗値は変わらない

(2) キャパシタンス(コンデンサ)Cのふるまい

(3) インダクタ(コイル)のふるまい

(4) CR回路のふるまい

(5) CR回路とパルス波の中身

(6) パルス波をフーリエ級数で表現すると

(7) LRフィルタを作る

(8) 電圧依存電圧源で信号を作る

(9) 電圧依存電圧源のLaplace オプション

◆スイッチング電源ICのシミュレーション

(1) LTC1144 (2) LTC1144 (2) (3) LTC1144 (3) (4) LTC3261(1) (5) LTC3261(2) (6) LTC3202(1)

◆ウィーン・ブリッジ発振回路のOPアンプ、フィルタの役割

(1) 低周波の正弦波発振回路

(2) ウィーン・ブリッジ回路各様の特性を.measコマンドで測定

(3) バンドパス・フィルタの出力の減衰とOPアンプの増幅率の関係

(4) ウィーン・ブリッジ発振回路を単一電源で動作させる

(5) ウィーン・ブリッジ発振回路に振幅の制限回路を付加する

(6) ウィーン・ブリッジ発振回路を実際の回路で確認する

(7) ウィーン・ブリッジ発振回路を実測したCRで確認する

◆OPアンプを利用したフィルタ回路のシミュレーションと実測

(1) 実測値を測定するための準備

(2) Scopyのインストール

(3) コンデンサにはインダクタンス成分もある

(4) ムラタ製作所のセラミック・コンデンサのLTspice用のデータを利用する

(5) シミュレーション結果とScopyによる実測値とを比較する

(6) 非反転増幅器のシミュレーション結果とScopyによる実測値とを比較する

(7) 単一電源で動作させる

(8) 単一電源でAC信号を大きく振幅させる

(9) LTspiceのシミュレーション結果をADALM2000でトレース

(10) 低域の周波数特性の改善