初心者のためのLTspice入門 フィルタ回路の再確認(11)LTspiceに設計データを入力しサレン・キー型ハイパス・フィルタを設計②
サレン・キー型フィルタの設計ではOPアンプの特性値は設計条件に含まれていません。前回設定した条件で、OPアンプをLT1115に置き換えます。
回路の各素子の値を設定する方法は、前回の「初心者のためのLTspice入門 フィルタ回路の再確認(10)」をそのまま利用しているので参照願います。
https://www.denshi.club/ltspice/2020/02/ltspice-10ltspice.html
●OPアンプの配置
回路図上のOPアンプは上がプラス入力、マイナス電源、下がマイナス入力、+電源となりコンポーネントから取り出したOPアンプのシンボルとは上下反転しています。そのため、Ctrl+Rキーを2回クリックして180°回転します。その後、Ctrl+Eキーをクリックしてこの配置にします。
C1=0.01μF、Fo=10kHz、Q=0.3、0.5、0.707、H=2の条件で設計された、サレン・キー型ハイパス・フィルタのシミュレーション結果を次に示します。
LT1006の場合は高域の周波数特性が低下していましたが、LT1115では2MHzくらいまでは平坦な周波数特性を示しています。この違いはそれぞれのデータシートで確認できますが、それぞれのOPアンプの高域のゲインに差があるためと考えられます。
データシートからそれぞれのOPアンプのゲインは次のようになります。
1Hz時の利得 [dB] |
100kHz時の利得 [dB] |
1MHz時の利得 [dB] |
|
---|---|---|---|
LT1115 | 150 | 55 | 30 |
LT1006 | 120 | 20 | - |
●実際の回路での確認
LT1115のOPアンプに差し替えた実際の回路を用いて、ADALM2000で周波数特性、出力の波形の様子を確認しました。
回路の素子は、次に示すように前回と同じものを利用しました。
Qが0.707時、R1=1252Ω R2=2023Ω。 R3、R4も同じ。 C1、C2 = 0.01μF 使用した素子; カーボン抵抗 R1は1kΩ+220Ω R2 、R3、R4 は2kΩ フィルム・コンデンサ C1、C2は0.01μF |
以上の回路でLT1115をセットし、ADALM2000で周波数特性を調べた結果を次に示します。
高域の特性はフラットの期間が1MHz以上に伸びています。次に40kHzの正弦波を入力したときの入出力の波形を次に示します。橙色のラインが入力波形で紫色のラインが出力波形です。入力正弦波のピークは1Vで、出力のピークは2V強の値となっています。
同じ条件でのLTspiceのシミュレーション結果を次に示します。入力信号は設定値ですから1Vのピーク値になっています。出力は2.07Vと実際の回路とLTspiceのシミュレーション結果とほぼ同様な結果となりました。
LT1006もLT1115も共にカットオフ周波数のフィルタとしての特性は同じ結果を得られました。しかし、LT1006とLT1115では高域の周波数が異なり、LT1006は1MHzのゲインがマイナスになっていて高域のゲインが得られない結果となっています。OPアンプの選択に当たっては、必要とする範囲での十分なゲインが得られるかデータシートなどの確認も必要になります。
(2020/2/18 V1.0)
<神崎康宏>